建築士法改正!建築士の受験資格が緩和? その内容とは⁉︎|受験資格変更はいつからか

一級建築士試験

平成30年12月8日に「建築士法の一部を改正する法律案」が国会で可決されました。
これにより、一級建築士の受験資格として必要だった学歴や職歴は登録要件に変わるようです。
この改正の背景と今後の変更点などについてまとめてみました!

 

 

改正の背景

そもそも何故改正する必要があったのか、理由は以下の通りです。

建築士法の一部を改正する法律案

理由
最近における建築士をめぐる状況に鑑み、建築物の設計、工事監理等を担う優れた人材を継続的かつ安定的に確保するため、一級建築士試験、二級建築士試験及び木造建築士試験の受験資格を改める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

参照:衆議院HPより

要は年々減少している資格保有者数(≒受験者数)の減少を喰い止めるべく受験資格を緩和すると言うことです。
一級建築士の受験者数は平成20年:51,323人から平成30年:30,545人とたった10年で約40%も減少しています。
一方で合格者数は平成20年:4,144人から平成30年:3,827人と8%ほど減少しています。(合格率は平成20年:8.1パーセントから平成30年:12.5%)
上記から、有資格者の減少を合格率で調整しているようにも見えますが、それでも8%も減少しているのが現状です。
なにより、60歳以上の人が一級建築士の約4割、50歳以上の人が6割以上を占めているなど高齢化が問題とされています。
建築物の安全性の確保において重要な役割を担う建築士の人材確保が困難になることを予測して、歯止めをかけることが本改正の目的ということです。
この改正は、「日本建築士事務所協会連合会」「日本建築士会連合会」「日本建築家協会」の建築設計三会がまとめた「建築士資格制度の改善に関する共同提案」の趣旨を取り入れたものです。

建築士資格制度の改善に関する共同提案とは?

上記のように今回の改正は「建築士資格制度の改善に関する共同提案」の趣旨を取り入れたものです。では、この提案とはどのような内容かかいつまんで解説したいと思います。(下記は全て原文ではなく概要を再記述したものです。原文を読みたい方は「建築士資格制度の改善に関する共同提案」と検索してみてください)
先ず問題点として、
・建築士事務所に所属している一級建築士のうち50歳以上が6割以上を占めている
・受験者が減少し、H19からH28までの10年間で約4割減となっている
・受験要件として一定の実務経験が必要だが、業務が忙しく勉強時間が取れない場合がある
が挙げられています。
そのことから、以下のような提案がなされました。
・実務経験は建築士名簿に登録して建築士としての業務が開始可能な状態となる前に積めばよく、受験前に実務経験を課す必要は必ずしもない。そのため、実務経験は受験要件から登録要件とする。
そのほかにも、「実務経験範囲の拡大について」「学科試験合格者が受験できる製図試験の受験要件の見直し」「試験内容の改善について」といった項目が提案されました。
中でも、「学科試験合格者が受験できる製図試験の受験要件の見直し」は現状学科試験合格者はその年を含み製図試験は3度までしか受けることができず、3度不合格となると学科から再度受験しなくてはならないことに対し、学科試験と製図試験を切り離し、学科合格後は何度でも製図から受けることができるというものでした。
また、「試験内容の改善について」は、現状実務ではCADが主流になっているにも関わらず、試験は手書きのため受験に特化した特殊な勉強を行わなければ合格が難しいという認識が一般化しつつあることに対してCADによる試験の導入を検討するというものでした。
上記二点、特に学科試験と製図試験の切り離しは全受験者にとって期待値の高い内容だったのではないでしょうか。
しかしながら、残念ながらこの提案のうち今回法律案として提出され、可決されたのは実務経験の登録要件化のみでした。

改正の内容

まずは以下をご覧ください。

建築士法の一部を改正する法律案要綱

一 建築士の免許
一級建築士、二級建築士又は木造建築士の免許は、一級建築士試験、二級建築士試験又は木造建築士試験に合格した者であって、大学等において国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業し、建築に関する実務の経験を一定期間以上有する者等でなければ、受けることができないものとすること。
(第四条関係)
二 一級建築士試験、二級建築士試験及び木造建築士試験の受験資格の見直し
大学等において国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者は、建築に関する実務の経験がなくても、一級建築士試験を受けることができるものとする等、一級建築士試験、二級建築士試験及び木造建築士試験の受験資格について所要の見直しを行うものとすること。
(第十四条及び第十五条関係)
三 その他
1 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。(附則第一条関係)
2 その他所要の規定を整備すること。

参照:衆議院HPより

今までは、大学卒業後一定の実務経験を積んだのち一級建築士を受験することができました。
しかし、本改正が施行された後からは、受験要件のみ満たせばいつでも受験することができるようになりました!
例えば、大学院へ進学する場合は、学部卒業後大学院在学中に受験して就職前に合格しておくことも可能になります!
また、工業高校を出てすぐに二級建築士に合格した場合は、実務経験2年で二級建築士の免許を取得すれば最短20歳で一級建築士試験を受験することが可能になるのです!
学科試験の法規や製図試験はある種の体力勝負となるため、より若いうちに受けられるというのはメリットかもしれません。
また、就職活動時に合格していれば履歴書に書くこともできるでしょう。
しかし一方で、大学院を卒業し有名アトリエや組織設計事務所、スーパーゼネコン設計部など人気が高く、競争率が高い設計事務所への就職を希望する場合は、卒業設計やコンペなどの設計能力(センス)の成績が重視されることに変わりはないと思われます。勉強に時間を取られて設計が疎かになることは本末転倒だというのは言うまでもないでしょう。
ということは、工業高校や学部卒で就職した人が社会人1年目から受験ができるというのが最も恩恵を受けるケースとなるのではないでしょうか。

改正によって試験はどう変わる?

本改正ではまず受験資格のある人が格段に増えるため、受験者が増えると思われます。
一方で、有資格者を増やすことが目的の一つのため、合格率は大きく変わらないのではないでしょうか。

 

施行はいつから?

公布から2年以内の施行なので、早ければ2020年の試験から適用されることになります!
受験者及び有資格者の減少は、重要な問題とされているため早々に施行されるのではないでしょうか。

試験の概要は毎年4月頃建築技術教育普及センターのHPで発表されます。
しかしながら、4月からの勉強では試験に合格することが難しくなるため、丁度工業高校や大学を卒業される方は、この法律の施行情報をチェックして勉強期間を確保できるようご注意ください!
(嫌でも資格学校からダイレクトメールが来るかもしてませんが。。笑)

 

まとめ

建築士事務所に所属している一級建築士は日本中で約14万人いると言われています。
そのうち50歳以上が6割ということは、仮に60歳定年だとすると10年後には単純計算で今現在一級建築士の人は5.6万人程度まで減るということです。
もちろんそれ迄に新たに一級建築士になる人や、定年がないもしくは65〜70歳という人もいるためこのようにはなりませんが、それでも大幅に減ることは間違い無いでしょう。
これはある種のチャンスかもしれません!
持っているだけで収入になるような資格ではありませんが、無ければできないことが多いのも事実です。
「足の裏の米粒:取らないと気持ち悪いが、取っても食えない」と揶揄される資格ですが、ある一定規模以上はなくては建物を設計できない意味のある資格です!
資格需要はこれまで以上に上ることが期待されますので、今から受験される方は希望を持って受験に挑んでみてください!

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